有限会社ぱっしょんの沖縄発信ビジネスモデル更新中♪

「時流裏表」
編集委員　武富　和彦

　この会社について、何の予備知識も持たずに那覇新都心の本店ショールームを訪ねれば、きっと戸惑うだろう。ここは何屋さんなのか、と。
　表の看板は「π　パイウォーターショップ」だが、店内に入ると正面陳列棚に並ぶのは乾燥野菜菓子に消臭液、栄養補助食品、果汁飲料などなど。見回せば浄水機器や水容器もあるが、それにしても、一見しただけでは本業を判断しかねる。

■経営コンサル
　
　ぱっしょん（那覇市）はつかみどころがない会社だ。事業の出発点は「水のガソリンスタンド」。浄水器を通した水を１㍑単位で量り売りしている。しかし、店舗には共通性を見いだせない多様な商品が並ぶ。
　ひと事で説明するとどんな会社なのかー。與那城幸博社長（41）から返ってきた答えは「経営コンサルタント業です。企業と個人事業者のサポーターですね」。水を売り、生活雑貨や飲食品を売っていながら経営コンサルタント業？
　「通常のコンサルタントはコンサル料をもらいますが、うちは一切もらいません。代わりに、相手先の商品をうちが仕入れて販売することで利益を上げる。さらに、うちの商品を相手先に卸して利益を上げる。商品が売れないとうちには何も入ってこないので、売れるように工夫するし、アドバイスもする。一般的な形ではありませんが、これも一つのコンサルタントだと思っています」
　実は與那城社長、１０年余り銀行に勤め、その後も流通関連企業の副社長をして２年半ほど経営に携わった経験を持つ。財務や人材育成などの知識に明るく、取引先から持ち込まれる相談は多い。基盤事業の「水」に、それらを積み重ねたものが、現在のぱっしょんだ。

■利他が利己に

　「財産というのは、お金だけではない。人的つながりや情報も貨幣価値に変わり得る」。水を通して結ばれた取引先が、有形・無形のサポートをすることで成長すれば、いずれ自社も恩恵を受ける。
　「利他から利己へ」。何の脈略も内容に見える商品群は、一つ一つがぱっしょんと取引先を結ぶ絆であり、共に育つ源だ。実際、取引先が自社商品を購入したり、購入者を紹介してくれたり、中にはフランチャイズ（FC）契約を終結することだってある。来年は５２店舗目の加盟店が新潟にできるが、これも別業務で取引していた企業が飛び付いてきた事例だ。
　各加盟店は、水のほかに岩盤浴、米販売・帽子など、事業主ごとに別途得意分野を扱っている。多種多様なこのプラスアルファ部分はリスク分散にもなる。
　創業は2002年2月。1期目売上高は8100万円だったが、06年1月期は１億2000万円、07年7月期には2億円を突破する。主力は今も売り上げ高の３割を占める水事業だが、消臭液、野菜菓子、除菌サービスといった取引先関連事業が年々増え、成長エンジンに育っている。
　あまり知られていないが、10月中旬からの2か月弱で2000万円を売るイルミネーション事業は、観光業界など事業所向けで県内トップ級の受注額を誇る得意分野だ。

■アナログ型

　経営コンサルタント機能を併せ持つ小さな総合商社ー。ぱっしょんの特徴を簡単に言えば、そんな表現が適当だろう。情報と人間に重きを置くため、人を介して事業が増えた。自宅の机一つで始めた事業は約５年たった現在、小さいながらも那覇新都心地区に本店を構えるまでになり、従業員も１５人を数える。
　あえて、もの足りない…を挙げれば経常利益が５％にすぎないことか、これは知名度を上げるための初期投資として広告宣伝に力を入れたからだが、「でも極端に利益率を上げようとは思わない。うちだけが儲かる仕組みはどこかに無理がでる。加盟店や取引先が広く利益を上げる形がいい。事業には好不調の波があるが、人間関係で構築された事業は急激に落ち込むことはない」。
　人間重視で一つずつ階段を上る”アナログ型経営”。対面販売にこだわる万屋的存在は、合理主義が幅を利かせる時代にあって異彩を放つ。